アスリートOB・OGインタビュー? ミズノ株式会社 山田延孝さん(東京学芸大学蹴球部卒)
CSParkの姉妹サービスとして2014年より始まった体育会学生の就職サポートサービス"CSPark Career"。 ここでは体育会学生が就職活動と部活動の2つを両立し、共に全力で取り組めるようなイベントやサービスを提供していますが、今回からそのサポートの一環としてCSParkと連動した"元体育会学生"によるインタビューを連載していきます。
"体育会の強みって?"
"スポーツしかやっていなくて就職活動が不安…"
"実際に先輩たちはどういう仕事をしているの?"
… など、自分の進路を考える上で悩みは尽きないもの。その疑問や不安を解消し、1人1人の体育会学生が自信を持って就職活動に臨めるように、先輩たちが部活 に励む体育会学生の皆さんへのメッセージを添え てインタビューに協力をしてくれました。第4回は東京学芸大学蹴球部の卒業生であり、現在はミズノ株式会社にお勤めの山田延孝さんにお話を伺いました。
選手が全ての運営を担った大学時代
-まずは、自己紹介をお願い致します。
小学校1年生からサッカーを始めて、大学まで15年ほど続けてきました。大学は東京学芸大学なのですが、教員になりたいと思った訳ではありません。単純に高いレベルでサッカーを続けたかったというのと、国立大学に進学をしたいということで選びました。高校まで満足いく形で部活動を終えられなかったので、最後の大学4年間でサッカー人生をきっちり終わらせたいなと思ったんです。大学では高校名で練習の内容も分けられる中で、自分の高校はそこまで強くなかったので、最初の1ヶ月はボールに全く触れませんでした。1日10kmくらい走っていて、最初は正直きつかったですね。ただ、4年間でプレーヤーとしての人生は終えようと考えていたのでやめようとは思いませんでした。
-競技面では苦労したのでしょうか。
自分たちの代では今でもサッカーをやっている選手が5,6人いて、彼らとは終始次元が違ったなと。サンフレッチェ広島に行った茶島(雄介)などですね。その中でA,B,C、と3,4チームほどあって、1つカテゴリーが上がれたらモチベーションにもなりましたし、いつかトップクラスでプレーして、その世界を見てみたいというのはありました。
-山田さんはプレーヤーに加えて、主務をやっていたと聞きました。
学芸大のサッカー部はほぼ選手で全て運営をするんですよね。選手兼運営という形なんですけど、その中で役職を決める際に自分はじゃんけんで負けてしまって(笑)。1年のときは雑用だったんですけど、3年のときは渉外という形で色々と外に出ていました。多分、どこの大学もそうだと思うんですけど、大学の体育会は内向きになってしまって、自分の大学のことばかり考えたりしてしまうかなと。あとは自分の同期としか触れ合わないことが多いと思います。その中で自分は少し、視野を広く他の大学を見ることができたのは良かったなと思いますね。大変だったことは、1つのミスがチーム全体に関わってくるというところでしょうか。登録のミスとかも許されないですし、試合のメンバー表作成もします。そこで1つでもずれるとその選手が試合に出られない。出ている選手はプロを目指して1試合でも多くアピールの場にしたいと考えているので、彼らの人生を決めてしまう可能性もありました。なので、すごく大変でした。裏方でしたけど、重要な仕事でしたね。
競技スポーツとは全く別の部署で奔走中
-就職活動についてお聞きしたいと思います。どういったところを軸に行っていましたか?
自分は一般就職に絞っていたのですが、同期が20人いる中で一般就職をしたのは4人ほどでした。残りは教員や指導者ですね。基本的には教員です。ただ自分としては、教員になると非常に狭い視野での仕事になるということが引っかかって。それよりももっと広い範囲で仕事をしたいなと。ただ、教育実習も3回行った中でその仕事も魅力的には感じました。
- 一般企業に行くにあたってミズノを選んだ経緯を教えて下さい。
一番大きいのは、昔からスポーツをやっていたということですよね。別の理由としては、以前海外を一人で旅したことがあって、アフリカやアジアの貧困地域を回っていたときに、ところどころでミズノの力を感じることがありました。たとえばアフリカのルワンダという国では、初めてパラリンピックに出たときに協力をしてくれたのはミズノだったということを現地の人に聞かされました。当時ユニフォームを提供してくれたみたいです。そのことに現地の方々が感謝しているという話を、僕が”ミズノ”という単語を出さなくても話してくれました。そういう風にスポーツの力で海外に何かできるんじゃないかな、そういう会社なのかな、という風に思いました。
- 今現在はどういうお仕事をしているのですか?
今はライフスタイルチャネル営業部という部門に所属していて、いわゆるミズノが強いと言われる競技スポーツとは全く別の部署です。一般消費者をターゲットにしている部署で、チャネル的にも家電業界とか紳士服とか、ミズノが関係あるの?とびっくりされるようなスポーツ店以外への営業ですね。基本的に扱っているのは健康系商品です。サポーターとか肌着とか、今はそういうところをテーマにして事業を拡大していこうと思っているところです。スポーツの技術を一般のアイテムに取り入れたものを、消費者の方にどんどん売っていこうと。提案としては、相手にとっては全く初めてなので、健康系のアイテムやウォーキングシューズ、ランニングシューズというものを扱いませんか?と売り込みをしています。今までミズノ商品の扱いがなかったような店舗にも、売り場を作ってもらったりもしています。
- 基本的には小売店への営業でしょうか
あとはネットショップとかですね。既存のお客さんよりも、新規取引を目指して営業に行くということのほうが多いです。新規取引を専門にする営業部隊もありますし、様々な業種の展示会が東京ビッグサイトで毎週開かれているんですけど、そこにミズノも出店しています。例えば全くスポーツと関係ない介護のジャンルの展示会でも出店をして、周りからすれば「なんでミズノさんがいるの?」という好奇心からけっこう寄ってきてもらえるんですよね。そこでコミュニケーションをとって、“こういう提案ができるんですよ”というアプローチをします。もちろん失敗も多いんですけど、商談がまとまれば契約をして、取り組みを進めていくという形です。私自身、展示会場に行くこともありますし、営業部隊がとってきた取引を大きくしていくということも多いです。スポーツ小売ではミズノはものすごく強くて、競技がメインの会社なんですけど、新しい業界にいくとミズノなんて全く知られていないですし、”どんなことをやるの?”と思われます。最初は取り組みが上手く行かなかったりするんですけど、新しいところにとびこむだけに失敗できないなと。看板を背負っているところがあるので、そこは責任感を持ってやらないといけないですよね。
主務の仕事は大変だけど、絶対にプラスになる。
- 体育会の4年間が社会人になって生きていると思ったことはありますか?
根性はありますよね。何回折れても、耐久性があります。なんとかBチーム、Aチームに上がっても1回怪我をしたり、1度ミスをしたら次の試合にはメンバーから落ちる。そういうことが当たり前なので、本当にシビアな戦いをしてきたなと。仕事で新規のところと取り組みをしたときでもミスを許されない場面では、責任感を持ってではないですけど、細心の注意を払って交渉しますし、例えば1回ダメな商談になったとしても次には視点を変えて新しい提案をしようとします。そういうところは体育会にいたことが、けっこう生きている部分かなと思います。
- "主務"という役割はどうでしたか?これも今に生きているように思えます。
主務は細かい業務が多かったです。例えば選手たち1人1人のコメント、キャッチコピーとかチーム紹介とかも考えます。納期もかなりタイトなものもありましたし、そのへんの業務のスピード感は上がりました。効率的に仕事が出来るようになったなとは、4年間を経て思いましたね。それ以外にサプリメント関連の担当の方とか、自分たちのユニフォームサプライヤーであるメーカーの営業の方との面会も行っていました。そのおかげで、スポーツ業界がどういう動きをしているかというのも勉強になりました。あとは自分自身がユーザーだったので、そういう目線からメーカーにはこういうことをして欲しいとかも要望していました。それが今、逆の立場になって、学生目線で色々と考えることができたので、そこは良かったかなと。これで主務をやろうとしてくれる人が増えるといいですね(笑)仕事は大変ですけど、絶対にやっておいてプラスになります。
-それでは最後に、体育会学生の強みをどう考えているかを教えて下さい。
個の力もチームの一員としての力も養えるかなと。そういうのはあります。社会人になるとどっちの力も必要になってくるので、チーム力だけでも個人は強くならないですし、かと言って個だけでもチームは強くはならないので。4年間、苦しい経験をして個人的にも強くなって、そこでチームで励まし合って集団としても強くなる。そういうところは確実に社会人になっても生きてきているかなと。会社はチームなので。その中でも自分の力を個で発揮できるというのはどこの会社でもあると思うので。その力を体育会の学生には養ってもらいたい、活かしてほしいなと思います。
< 取材・文・写真 / 竹中玲央奈 >
山田延孝(やまだ のぶたか)
東京学芸大学蹴球部卒
ミズノ株式会社ライフスタイルチャネル営業本部
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※上記の情報は2015年9月時点のものになります。