全国トップクラスの強豪部活から学ぶ、最強の組織の創り方
部活に取り組む中でこんなことを思ったことはないでしょうか?
幹部「みんなが思ったように動いてくれない…」
メンバー「この取組みはなんのためにやってるんだよ…めんどくせぇ」
私はよく思っていました。笑
技術向上のための練習ならまだしも
「練習後に今日のよかったところを共有しましょう!」
「学校の掃除を毎日行いましょう!」
などの全員の意識、モチベーションをあげるための組織施策は、何のためにやっているのかを全員が理解するのは難しいことがあります。技術向上のための練習は、直接的に実力向上に繋がりますが、組織施策は直接的にその効果を実感することが大変、稀です。
本日は、全国トップクラスの強豪校から学ぶ『組織力』強化のための施策をご紹介します。
①T大学ラグビー部
※写真はイメージです
最上級生が雑用係
『全部員が仲間のこと、チームのことを大切に思い、自分のことと変わりなく仲間やチームのことを考えられるようにならなければ、強いチームはつくることができないと思います。』
T大学の監督がおっしゃっていたこの言葉。至極当たり前のことかもしれませんが、「やれ」と言われてもなかなかできることではありません。
人のため、組織のために働けるようになるためにはその人自身に十分なエネルギーが残っていないとできません。
多くの部活動では、組織に馴染むために最も大事な1年生の時期に、慣れない一人暮らし、大学の授業、アルバイトなど心身共にいっぱいいっぱいになってしまいます。
だからこそ、余裕のある上級生が雑用係を務めることで、1年生のエネルギーを蓄えさせてあげるそうです。
その結果、下級生の頃から人のため、組織のためという考え方、価値観が染みついており、前人未到の全国大会優勝9連覇に繋がったそうです。
"部活という組織"と"部活を構成するメンバー"の関係性
最近では企業において「エンゲージメント」という言葉がよく使われています。
エンゲージメントとは”組織に対する従業員の愛着心、組織と従業員の間の深い結びつきのこと”を意味しており、人材の流動化が激しい現代において、人材確保をするための一つの指標として利用されています。
企業は大きく”事業”と”組織”という2つの側面に分かれますが、インターネットの普及により、事業内容で大きな差を生むことが難しくなりつつあります。
だからこそ、”組織”で差別化を図ろうという企業が多くなってきているのです。
例えば、とても和気あいあいとした雰囲気の職場であったり、どこよりも早く成長をすることを目標にしている人たちが集まっていたりする企業があります。
こういった企業は、事業という”何をやるか”での差別化ではなく”誰とするのか”という組織的、人間的な側面での差別化を図り、企業の強みとしています。
『最上級生が雑用係』という手段を通して、『全部員が仲間のこと、チームのことを大切に思える強いチーム創り』を実現しているT大学は、とてもエンゲージメントの高い部活動と言うことができるでしょう。
②K大学男子バスケ部
※写真はイメージです
3ヶ月に一回の評価面談
部員数が増えれば増えるほどばらばらになってしまう、組織としての価値観。
地道にやらなければ効果を得ることのできない、価値観の浸透。
だからこそ重要になってくるのが、価値観の浸透のための長期的な施策。もっと言えば、長期的に継続できる仕組みを整えることです。
その一つの手段として、価値観の浸透のための評価面談を行っている部活が存在します。
例えば、企業の場合はボーナスを決める際には、営業での売上などに対する数字での評価と、周りからの評判や評価などの数字では表せない部分での評価を行いボーナスの金額を決めることが多くあります。
営業での数字を積むことのできる人が高評価を受けるように、部活動では、試合での勝率やシュート決定率が高い人が評価される傾向にあります。
勝負の世界において勝率はもっとも大事です。
ですが、長期的に勝ち続けるチームや、引退時に多くのやりがいを感じてもらうためには組織としての強さも大いに関係してきます。
K大学バスケ部での取り組み
K大学での行動指針”Work Hard”と”No Excuse”に当てはめてみると、「Aさんは今月は毎日誰よりも朝早く来て練習をしていたよね。だからWork Hardでは部内で1番ですね、10点です。ですが、まだ一年生ということもあり、周りへの遠慮がありました。朝練に同期の友達を誘うという行動はとても良いけど、遠慮せずに先輩も誘ってくれたらもっと嬉しいな。
だから今回は、No Excuseは7点だね。」
などのように幹部もしくは監督の方々に評価をしていただきます。
何もしなければ行動指針という言葉だけが形骸化して残ってしまいますが、それらを評価に組み込むことで、常に全員がそれらを意識した行動を取ることができます。
企業の場合はボーナスに関連付けることが多いですが、部活動の場合は理想の組織に向けて評価を通して軌道修正をしていく、もしくは点数のもっとも高かった人をMVP(最も価値のある行動をした人)として表彰するのも面白いかも知れませんね。
③M大学女子ラクロス部
※写真はイメージです
昨日のよかったところの振り返り
これはM大学のラクロス部で実際に行われている施策です。
毎日練習が始まる前のミーティングで、ランダムに選ばれた部員が昨日の部活の練習中のよかったところを全体で伝えるという制度です。
この制度を運営する上でのポイントは2つあります。
1.「技術」ではなく「組織」としての良い点を褒める
「このプレーが良かった!」など、技術がすごいという褒め方をするのではなく、この人のこういう発言、行動がよかった!などを、行動指針や価値観を元に褒めることがポイントです。
毎日練習をしていると、どうしても技術向上に目が向きがちになってしまいます。
だからこそ、ちょっとした時間を使って、組織に視点を移動させてあげることが重要になってきます。
2.ランダムに当たる制度を作る
もう一つ大事なのは、常に誰が発表をするのかわからないという状態を作ることです。
学校の授業でも次に当たるのは自分だ!とわかっていれば、必死に授業を聞いて質問に答えようとします。逆に自分が当たらないとわかると、話を聞かずに内職をしたり昼寝をしたりする学生っていますよね。
これを逆手に取って、常に発表直前にランダムに発表者を決めるようにします。
すると、練習中から全員が周りの行動や言動に気を配るようになるそうです。
メンバー全員が技術だけでなく、組織という視点を持ってもらうためには十分効果的な施策となるでしょう。
『会議で発言しないなら、今すぐ出て行け』
会議で発言しない新卒社員に対しての罵声。
『会議で発言しないなら、今すぐ出て行け』
少しきつい言葉のように思われるかも知れませんが、会議において発言しないということは会社に対してなんの価値も発揮していないと同等である、と捉えられることもあります。
実は私自身も入社直後は毎日のように言われていました。笑
「今日の会議の参加人数は多いから。入社してまだ3ヶ月だから。」
など、通用する言い訳は多々ありますが、社会人としても部員としても常に価値が発揮できるように、他人事としてではなく、常に自分事として捉える癖をつけておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
組織によって十人十色の組織施策が存在していますね。
少し話は逸れますが、有名な逸話に「3人のレンガ職人」という話があります。
(参考URL:http://www.total-engagement.jp/808/)
話の中で登場する3人の職人たちは、それぞれ「レンガを積む」という同じ仕事をしていますが、つまらなそうにただ仕事をする職人もいれば、とても楽しそうにレンガを積んでいる職人もいます。
なにがそのような違いを生んでいるのでしょうか?
答えは、『意識』です。
「レンガを淡々と積む」という行動だけを見るとつまらないと感じるでしょう。
ですが、そのレンガを積むことによって「橋ができる」と思うとどうでしょうか?
少し頑張れるような気がしませんか?これは行動ではなく、目的に目を向けています。
最後に、レンガを積むことにより橋ができ、その橋を渡ることでに、今まで通学に3時間かかっていた子どもたちが30分で通学できると考えるとどうでしょうか?
さらに頑張れるような気がしませんか?
これが意義を意識するということです。
このように自分たちが今、何のためにやっているのだろうか?と意識を変えることにより、普段の部活動が楽しくなるだけでなく、結果も大きく変わってくるかもしれません。
皆さんはどうでしょうか?
部活では必ずと言っていいほど実施されている、組織への取組み。
残念ながら、その意義を全員が意識できている部活は少ないそうです。(大きい組織になればなるほど難しい。)
上級生、下級生、一軍、二軍など、立場によって関わり方が変わってきますが、個人の意識が少しずつ変われば組織としては大きく変わってきます。
全国優勝、一部昇格など部活によって、目的は様々かと思いますが、目的達成のための一つの手段として、個人全員が組織に目を向けて見るのはいかがでしょうか?